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NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」が、銀行預金の不正引き出しに悪用された。9月10日時点で被害額は約1,800万円とされているが、1億2,000万口座を抱えるゆうちょ銀行でも被害が報告されており、今後さらに拡大する懸念もある。

しかし、なぜこのような初歩的な問題が起こったのか。その土壌をつくったのは、テクノロジーリテラシーの低さと、大企業に対する根拠のない信頼感だろう。NTTドコモのサービス設計が杜撰であることは間違いないが、それを確認もせず安易に提携し、銀行口座との接続を開放した銀行側の責任も重い。しかも、提携35行の中には、みずほ銀行、三井住友銀行のメガバンク2行も含まれている。意思決定権を持つ経営層にテクノロジーリテラシーがあれば、「この問題点はクリアできているのか」という1点の確認だけで防げた大失態だけに、残念極まりない。一方、メガバンクで唯一「ドコモ口座」と提携していない三菱UFJは、この4月にメガバンク初の理系トップを据えている。直接の因果関係はないだろうが、少なくとも世間的には、デジタルテクノロジーを推進している企業だからこそ“トラップ”に引っかからなかったと見る向きもあるだろう。

日本はかつて「技術大国」と呼ばれた。しかし、もはやそれは昔日の栄光だ。この30年間で世界時価総額ランキングがどう変わったかを見れば一目瞭然。1989年はトップのNTTを始め、上位50社中32社が日本企業だったが、2019年はたった1社。そして、現在のトップ企業群を占めているのがGAFAやBATHなどの「ビッグ・テック」であることは、テクノロジーリテラシーが企業経営に不可欠な時代となっているとともに、日本でその意識が根付いていないことを示唆していよう。

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