経済産業省の調べによれば、新型コロナウイルス禍の影響をもっとも受けたのは飲食や観光などの「生活娯楽関連サービス」。中でも低下への影響度の高い業種として飲食関連を挙げている。実際、大量の閉店を実行する外食チェーンが相次いでおり、テイクアウトやデリバリーに活路を見出そうとしている店舗も多い。そんな苦境の中、6月に平日として過去最高の売上高を記録した飲食チェーンがある。回転寿司「無添くら寿司」を展開するくら寿司だ。なぜV字回復できたのか。
その理由は、TVアニメも映画も大ヒットしている「鬼滅の刃」とのコラボ。最高売上をマークした6月12日は、コラボキャンペーンの初日で、2,000円以上購入した人を対象にオリジナルクリアファイルを配布。わずか数日で予定数量の20万枚が終了したという。さらに9月には、再度「鬼滅の刃」キャンペーンを実施。コラボメニューの提供や、5皿に1回挑戦できる「ビッくらポン!」にもグッズを投入、同月の既存店売上高は前年同月比107.9%を達成。さらに、10月からの「Go Toイートキャンペーン」でも話題の施策を実現する。それが「無限くら寿司」。「Go Toイート」は、オンライン予約をした飲食店で食事をすれば次回以降利用できるポイントが付与されるが、くら寿司はポイント付与分と同額の食事料金で利用できる。1,000円分の食事をすると1,000円分のポイントがもらえるのだ。実は、低額メニューをオーダーすることで、付与されるポイントと支払額との差額を利用し儲けが得られる「錬金術」は問題となっていた。農林水産省は「Go Toイート」開始1週間後に「付与ポイント以上の飲食が必要」という新ルールを設定している。くら寿司は、ルールの範囲内で最大限の顧客還元を実施したということになる。そして、それを「鬼滅の刃」と重ねてくる抜け目なさ。トレンドや社会情勢を把握し、的確にマッチングさせた施策を打ち出す―マーケティングの基本を実践できているからこそ、売上もついてきているといえるのではないか。