菅義偉首相は、12月4日の会見で2兆円の環境基金を創設すると表明。「野心的なイノベーションに挑戦する企業を今後10年間継続して支援する」とした。国をあげて脱炭素につながるビジネスモデル創出を支援することが確定的であることから、今後の経営戦略はそこを意識することが必須。では、どのようなビジネスが考えられるか。まずはエネルギー分野。水素関連やカーボンリサイクルのビジネスに対する需要が伸びることは必至だ。
直接「脱炭素」につながる取り組み以外でも「野心的なイノベーション」に挑むことは可能だ。ヒントとなるのが、2015年に欧州委員会が採択した「サーキュラーエコノミー・パッケージ」。排出物を出さずにすべて再利用するゼロ・エミッションという考え方は従来もあったが、サーキュラーエコノミーはその進化形。廃棄物の発生も新たな資源の供給も最小化し、資源の価値を目減りさせず再生・再利用し続けて経済効果を生み出そうという考え方だ。たとえばBMWは、電気自動車「BMW i3」で95%の部材に生物由来の再生可能素材を使用し、原料調達リスク低減と軽量化、コスト削減を同時に実現した。
さらに、次代のビジネスモデルとして興味深いのはPHILIPSだ。米ワシントンDCの公共駐車場へLED照明を供給した際、従来の「LED電球の販売」ではなく「LED電球への交換で削減された電力料金の一部を徴収」するビジネスモデルを提示。PHILIPSは200万ドル以上の収益を得て、ワシントンDCは年間約68%の電力料金削減に成功したという。環境保全に貢献できるだけでなく、顧客の利益も創出し、企業としての信頼も得られる――まさに“一石三鳥”の結果が期待できるというわけだ。サステナブルな企業経営を目指すなら、ぜひ取り入れるべき視点ではないだろうか。