従来型の雇用体系が崩壊し、人材の流動化が加速している今、企業内のコミュニケーションはますます重要度を増している。需要が細分化していることもあり、部署間やチーム感の連携が生産性に直結しているからだ。個々のコミュニケーション能力を高めるために注目されている研修の一つがドイツで1988年に生まれた「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」である。トヨタ自動車や資生堂、TBSテレビ、みずほ証券、日立製作所など600社以上が導入し、成果を挙げている。
DIDの研修内容は至ってシンプル。照度ゼロの暗闇の中でチームメンバーが共同作業する。相互に助け合わなくてはならず、通常の人間関係から脱した濃密なコミュニケーションが図れるというわけだ。合併後の組織融合に向け、先入観なく話し合う契機としてDIDが機能した例もある。
さらに、通常の状態では得られない「気づき」を促すことにもつながる。ある鉄道事業者が粘土で車両をつくるという幹部研修を実施したとき、全員が先頭車両のみをつくったという。リーダーとしての役割を期待される幹部ならではの意識といえるが、牽引される客車がなければ鉄道としては成立せず、顧客目線や部下への接し方を見直す契機になったという。
働き方に多様性が求められるようになってきた現在、人間関係を円滑にしつつ、「気づき」を促すきっかけとして、DIDの存在価値はより強まっていくのではないだろうか。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。