みずほ銀行が、来年1月から紙の通帳の発行手数料を新設する。1冊につき税込み1,100円という価格の多寡はともかく、「通帳の有料化」という従来にない施策は、大きく2つの意味を持つ。
1つは「紙とハンコ文化」からの脱却。同行は、紙の通帳の有料化と同時にWeb通帳サービスを開始。他行も同様の動きを見せており、三井住友銀行やりそな銀行は、Web通帳への切り替えで現金やポイントを進呈するキャンペーンを展開している。
もう1つは、経営に対する危機感が強まっているということ。顧客に忌避感を抱かせるような施策を打った背景には、通帳にかかる印紙税負担がある。1冊あたり年間200円かかるため、銀行業界全体での負担額は年間約640億円。Webに移行できれば相当なコスト削減になる。また、「通帳レス」からデジタル化への道筋をつけ、ATMや支店の統廃合につなげれば経営のスリム化も実現できよう。
とはいえ、コロナ禍により、現金を持ち歩いて現物を購入するという生活様式が変わりつつある今、顧客は「やってくる」ものではなく「呼び込む」ものへと変化した。しかし、「紙の通帳有料化」という施策からは、「金を融通してやっている」感覚が透けて見える。世界を動かしているプラットフォーマーに共通しているのは、顧客中心のスタンスとデータドリブンな取り組み。手数料という施策しか打てない銀行の姿勢はそれとは正反対。近い将来、顧客志向でサービス領域を拡大しつつあるフィンテック勢に取って代わられる可能性もゼロではない。