経済産業省は2月3日からデジタルトランスフォーメーション調査(DX調査)を開始した。これは、戦略的IT投資を促すため過去5回選定してきた「攻めのIT経営銘柄」を発展させたものだが、なぜ「IT経営」から「DX」へと名目を変えたのだろうか。ひとつには、「IT経営」と「DX」の本質的な違いが挙げられよう。前者はITを使いこなした経営のことであり、後者はデジタル技術をもとに経営やビジネスモデルを抜本的に変革すること。単にシステムを再構築したり、ITツールを導入したりするだけでは「DX」とは呼べないのだ。経産省は、DX推進において「経営のあり方と仕組み、DX実現の基盤となるITシステムの構築が必要」としているが、これはあくまで前提条件。その取り組みによって企業風土の活性化や売上の増大が成し遂げられなければ、DXが実現したとはいえない。その意味でいえば、日本でDXを実現している企業は非常に少ない。「GAFA」を筆頭に、最先端のデジタル技術を活用して躍進する企業が世界に続出している一方で、日本企業の存在感が年々薄くなっているのが何よりの証だ。
もうひとつ見逃せないのは、「2025年の崖」が間近に迫っていること。デジタル化に遅れたまま2025年を迎えれば、日本は世界に勝てない状況へと追いやられてしまう。「働き方改革」の旗印のもと、ICTを活用した業務効率化を進めている企業は少なくない。しかし、さらに考えを進め、デジタル技術をもとにビジネスモデルを再構築しないと生き残れない、ということを「DX銘柄」は教えてくれている。