データが価値を生み出す「データエコノミー」が本格化し、AIやビッグデータ解析の実用化が進んだことで、ビジネスのスタイルも変わりつつある。その象徴ともいえるのが、経済産業省が打ち出している「サイバーフィジカルシステム(CPS)戦略」だ。データの分析結果をもとに新たな価値や情報を生み出し、産業の活性化や社会問題を図ろうとするもの。簡単にいえば、モノをインターネットでつなげるIoTの概念を拡大させ、有機的なビジネスのサイクルを生み出していくシステムである。
このサイバーフィジカルシステムを活用し、V字回復を果たしつつあるのが東芝だ。2015年の不正会計発覚、翌2016年のアメリカ原発事業の失敗による巨額損失で存亡の危機に陥ったが、昨年11月発表の2019年4~9月期決算は過去10年で最高益をマーク。さらに、1滴の血液から2時間以内でがんを検出できる技術を開発し、話題を集めている。この復活のプロセスで重要な役割を果たしたのが、昨年1月に組織改編で設置された「サイバーフィジカルシステム推進部」。この分野のトップランナーをハンティングし、イノベーションを起こしたという。もともと高い技術力があったからこそ切り開くことのできた道筋ではあるが、技術を定量化して経営に生かす「サイバーフィジカル」がなければ、宝の持ち腐れになっていただろう。今年から5G回線が実用化され、巨大な容量のデータがやりとりされるようになる。規模や業種は違っても、データをいかに活用するかがビジネスの成否を分けることは間違いない。