野村證券は、2月25日に「野村スリーゼロ先進国株式投信」の取扱いを開始する。少額投資非課税制度の長期積立枠「つみたてNISA」の専用商品で、申込はインターネット限定。「スリーゼロ」は、委託会社報酬率、販売会社報酬率、受託会社報酬率の3つが0%という意味。つまり、信託報酬ゼロであり、費用をかけずに投資ができるというわけだ。
なぜこのような収益度外視の商品を開発したのか。同商品を設定する野村アセットマネジメントの執行役員は、日本経済新聞に対し「積立投資を行う中心世代である20、30、40代を応援する。証券人口を増やすプロジェクトだ」としたうえで「(20年の)期間中に投信や株式売買を始める顧客が増えるとか、(野村の)ローンのビジネスが拡大するなど、グループ全体で効果が見込める」とコメント。囲い込みを狙っての戦略であることをにじませた。
若年層の取り込みは、証券業界にとって大きな課題のひとつ。2019年12月末時点で約188万口座と順調に伸ばしてはいるものの、浸透しているとは言い難い。裏を返せば、未開拓市場が広がっているということ。人口減少社会に突入していることを踏まえれば、収益ゼロであっても、顧客を獲得することが、企業の持続可能性を高めるともいえる。また、「ゼロコスト」というキャッチーな売り文句を最大限に活かせるのが先行者。他社が手を拱いている今こそ、“撒き餌”としての効果を最大限に発揮できる。そんな思惑もあったのではないだろうか。若年層の取り込み競争が白熱化するきっかけになりそうだ。